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「先日別のお仕事で作成されたパッケージを見せていただきましたが、ああいうのはコンセプトの打ち合わせはありませんでしたか?」 「あれはでかい企業との仕事じゃない。俺はふたつ店をやってるんだが、片方では売れる商品がもう片方じゃ売れないんだ。取引先の営業が悩んでたから、こういうパッケージにしてみないかって持ち帰らせたら、俺がやることになった」 「それは興味深いお話ですね。そのふたつのお店にはどういう違いがあるんです? 立地ですか?」 「……ド健全な顔してるあんたには言いづらいが、片方は二丁目、もう片方はラブホの並びだがネイルサロンやらエステ、下着屋なんかの女性向けのショップが並んでる界隈。男向けのエロい煽りを箱に書いても、女性は手に取らないだろ。だからあの花柄」 「なるほど。紀谷さんは、女性が手に取りやすいものをと考えてデザインされたわけですよね」  ああ、と紀谷がこめかみを押さえて目を閉じた。 「まあそうか、それがコンセプトか……」     
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