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 そう言えば岩崎は、パッケージを変えたことでアダルトグッズの売れ行きが二倍になったという話を知っていた。紀谷の腕前が話題になったことがあったのかもしれない。  見送るために俺も席を立つと、紀谷はなんだかものすごく嫌そうな顔をしながら机を回り込み、俺に紙袋を突き出した。  忘れていた懸念をいきなり思い出す。後ずさりそうになった自分を必死に制止した。何があっても、何を言われても、しらを切り通さなければならない。  間近に立たれると体格差を見せつけられるようだった。あの夜見たシルエットと違うところを探すが、見れば見るほど硬い筋肉の感触や汗と整髪料が混ざった香りがまざまざと蘇り、赤面しそうになる。耳が熱い。  多分俺は顔を強ばらせていたのだろう。紀谷が明らかにむっとした。 「菓子。変なモノじゃない。……前回あんな態度取ったくせに今日は無理に時間取ってもらってしまって、悪かったな」 「え? あ、いえ……、お気遣いいただくようなことでは」 「受け取ってもらったほうが、また頼みやすい」 「では、今回だけありがたくいただきます」  ばれているのか、いないのか。  とりあえずこの場で切り出すつもりはないようだ。俺がほっとしたのと同時に、紀谷までほっとした顔をする。どういう意味だ?     
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