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これ資料、と杉田が紙三枚綴じただけの簡素な資料を机に置く。
うちで扱うのは、ほとんどがその程度の商品だ。雑貨屋に並んでいるそこそこかわいくてそこそこ購買意欲をそそるが、探してまで買おうとは思われない類の商品。近年は百円ショップとも競合するようになってしまったため、それなりに売れる見込みのあるものに広告費を掛けて売上を底上げする戦術にシフトしつつある。
これはどっちだろうと思っていると、杉田が偉そうに腕を組んだ。
「忙しいなら断ってくれていいけど」
「いや、別に。引き受ける」
「何なのおまえ。お人好しなの? 監査も課長から押しつけられたんだろ」
「俺がやったほうが早いしミスも少ない」
「はいはい、そうだろうよ。なんかコンセプトで考え込んでるぽいんだけど、説得してちゃっちゃと先に進むように言っといてくれ。丸め込むの得意だろ」
「信頼関係を築くのが上手いと言ってくれ」
「おまえは単に、あれこれ折衝するより、何でもかんでも引き受けるほうが楽なだけだろが」
うろんな目になる杉田の元に、彼が面倒を見ている笹川という二年目が駆け寄ってきた。
「すみません、昨日見てもらった図なんですけど、やっぱちょっとわからなくて」
「ああ? 名波に頼め名波に」
「直しとくよ。メールしといて」
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