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 迷いながら口を開こうとした俺を、岩崎がぴしゃりと遮った。 「まだ何も言ってない」 「聞きたくない。俺を巻き込むな」 「別に大した話じゃない。実は紀谷さんと仕事で顔を合わせることがあるんだ。だからメイクも濃くして、絶対別人だと思わせたかった」 「騙してるのか?」  岩崎は客商売のくせに無愛想かつ無表情で人を楽しませようという努力が見えないが、その反面、ものすごく真面目でまともだ。そんな奴に信じられないという顔をされると、まずいことをしてしまったのかもしれないと胃が痛くなってくる。 「……というか、紀谷さんも別人だと思ってるから態度が違うわけで、俺の正体なんか知りたくないだろうから。紀谷さん、会社での俺のことは嫌ってるんだよ。この前ちょっと話しただろ、強面のデザイナーの作ったものを褒めたら、なんかいきなり豹変して馬鹿にされたって」 「おまえ、それならなおさら騙すのまずいだろ。なんで断らなかったんだ」 「……だから……、まあ四回なら何とかなる。仕事が絡んでるから、俺が通うことでスムーズに進行できるようになるならそのほうがいい。あ、岩崎と知り合いとは言ったけど、どういう知り合いかは伝えてないから。伏せておいてくれ」 「同級生の何がやましいんだよ」     
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