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 頷くと、紀谷が深々とため息を吐いて椅子に深くもたれた。  でも、と俺は続ける。 「ありふれていること自体は問題ではありません。完全に新しい、誰も見たことのないものなんて売れませんから。皆が欲しいと思うものは、『売れてるアレと同じだけどちょっと違うもの』です。コンセプトには、そのちょっとした違いが欲しいですね」 「その違いを入れたせいで、購買層が限られることもあるだろ? 現に働く女性としたことで、女子高生なんかは外れるわけだよな」  それは当たり前だ。何を言ってるんだ、と目を上げると、同時に紀谷も後悔するような顔になる。  困っている様子があったので、ええと、と口を開いた。 「そうですね……。紀谷さんの中では既に商品のイメージが固まっていて、コンセプトを絞れと言われたことで、思い描いていたターゲット層から離れつつあるということですか?」 「イメージとしては働く女性なんだ。でもキャラものとかギャルっぽいブランドものを使いたくない女子高生、大学生あたりが、こういうのが欲しかったと思うようなものにしたかった。友達に自慢できるような」     
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