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「学生が大人っぽくてセンスのいいものを見つけたら自慢したくなる、というのはわかりますが、それと、疲れた女性が癒されるルームウェアはまた別のような気がしますね」 「そうか……。両立しないか」 「女子高生をメインターゲットに出来ればよかったんですが……、二十代半ばから後半というお話になってますね。紀谷さんの中で女子高生が商品を手に取る際のイメージは固まっているようですが、働く女性のほうはどうですか?」 「……わからん。が、ちょっと頭がすっきりした」  渋い顔で考え込んでいると思った次の瞬間、紀谷は椅子を蹴って立ち上がった。  弾みでテーブルが揺れ、紀谷の手元にあった紙コップからコーヒーがこぼれる。大柄な身体が俊敏に飛びずさった。 「おっと」 「火傷しませんでしたか? 今拭くものを……」 「いやいい」  彼は躊躇なくハンカチでテーブルを拭く。隣の給湯室に行けば布巾もティッシュもあるのだが、そうされては俺もハンカチを出すしかない。が、俺がそれを取り出す前に、紀谷にてのひらを見せられ止められた。  顔立ちに似つかわしい、無骨で大きな手だ。この男の口から、女性の癒しだの女子高生だのと出てくるのがなんだか不思議だった。作品のコーポレートサイトを見てくればよかったと、初めて興味らしきものが胸に浮かぶ。     
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