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「なるほど、よさそうですね。自宅でくらいかわいいものを着たい男性もいるでしょうし、格好いいものを着たい女性もいるでしょう。こちらから性別で絞るのではなく、購入者がデザインで選べばいい。賛成です。……が、会議でこのまま通らない可能性もありますので。もちろん通すよう最大限努力します」 「そこはあんたに任せるしかない」 「かわいいラインとシンプルなライン、二本立てでやっていくというのがネックになるかもしれません。その場合は、売れたらもう片方も、という形で推しますから」 「分かった」  紀谷はあっさり手帳を鞄に仕舞い、立ち上がる。  打ち合わせが始まってからまだ二十分も経っていない。俺は反射的に口を開いていた。 「やっと先に進めますね」  嫌みのつもりはなかった。労いの気持ちを込めてのことだった。  そして少しだけ、引き止めたい気持ちもあった。部署に戻ればまたつまらない、理不尽な仕事が大量に待ち受けている。もう少しゆっくりしていたい。  けれど見下ろしてくる紀谷の目が冷えた。胃がぎゅっと痛くなる。 「他の仕事ならもっとスムーズに進むんだろうな。足を引っ張って悪かったな。たかがアダルトグッズ屋、破られて捨てられるパッケージデザインの経験しかないものでね」 「……いえ」  いつもなら、こういうときどういうふうに受け流していただろう。思い出そうとして目を伏せた途端、視線を上げられなくなった。  ケイになら、絶対そんなことは言わないくせに。     
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