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 形のいい額を見せびらかすように掻き上げられた髪は、案外細くて柔らかそうだ。紀谷は目元をしかめる癖があるようで、そうすると強面にどこかシャイな印象が滲む。そう思って眺めると、引き結ばれた唇にもどことなく少年っぽさが残っているかもしれない。  このまごつくような間は、もしかして照れているのだろうか。俺の苦手な人種ではあるが、ちょっとかわいいところもあるじゃないか。寛大な気分になり、いつまでも見下ろしてきている彼に微笑を返してやる。  無表情に目を瞬かせた紀谷が、箱を差し出してきた。 「……よかったらどうぞ。使ってくれ」 「あ、ありがとうございます……。私にも使えるものなんでしょうか」  礼は言ったものの、試作品なのか商品名が入っていないので中身の見当がつかない。封もされていなかったので開けてみると、真っ赤なプラスチックの流線型の棒と、リモコンらしきものが入っていた。 「何か分かる?」 「美容家電ですか? 爪を整えるとか……、あ、踵を手入れするやつですか?」 「足の先から頭のてっぺんまで健全が詰まってるような顔立ちだもんな」  紀谷は鼻で笑うような表情になり、顔を背けていく。  その横顔を見て、突然勘が働いた。赤いプラスチックの棒が急に汚いものに思えて、指でつまんで箱に戻す。──恐らくこれは、いわゆるアダルトグッズだ。  俺は多分、嫌悪感を顔に出してしまっていた。自覚があったからこそ、申し訳ない気分でぼそぼそと取り繕う。     
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