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ファンデーションを塗られたりハイヒールを履かされたりするのは嫌だが、実のところ、俺はそれほどこのマネキン役を嫌がっているわけではなかった。
でなければ、バイト代も出ないのにここまで付き合わない。
「あら。いいわね、そのオールインワン。どこのかしら?」
「サンプル品だそうです。訊かれたら渡すように言われてるので、もらってください」
「ありがと。あたしも入るかしらね?」
俺が差し出したショップカードに、マミはうふっと笑った。つやつやした唇は俺の額より高い位置にあり、男らしい喉仏はちょうど俺の目の高さにある。背が高いのにハイヒールを履くから、いつでも目立つ。
こういったパーティに出るのも四回目なので、顔なじみがちらほらいる。俺のように、知人の中で一番ひげが薄いという理由でマネキン役に選ばれる人間は珍しいようで、ほとんどは『かわいい恋人を着飾らせて見せびらかす』場としてパーティを楽しんでいた。
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