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 紀谷が会社に連絡してきたのは、週明けだった。月末月初の事務処理で時間が取れなかったため、水曜に会社に来てもらうことになった。  毎月のことながら、細かい数字のつじつま合わせや関係部署への根回し、上長の説得、会議の資料作りでへとへとになっていたので、紀谷の顔を見たときにはほっとしそうになった。  おかしくなりつつある自覚はある。しかしそんなことを気にしていられないくらい、彼が持ってきたコンセプトは出来がよかった。更にデザイン案も添付してくれている。紀谷はいつもの淡々とした顔だが、少し目の下あたりに疲れが見えた。 「紀谷さんはSNSユーザーに知名度が高いと伺ってます。彼女たちをターゲットにするのはよさそうですね。体型を隠せる、写真映えするルームウェア……、いけると思います。絶対ニーズがあります」 「もうひとつ見て欲しいんだが……」  紀谷が差し出してきた紙には、シンプルなデザインのバスローブやワイドパンツのイラストがある。 「ユニセックスに展開するのは駄目か? 男でも着れるサイズにすることで、体型を隠したい女性のサイズをカバーすることもできるかと思うんだが」     
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