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 雑用でも何でも引き受けて常に忙しく動いていることの弊害に、『忙しそうだったからこちらの判断でやっておいた』と言われることがある。特に俺は人の仕事を途中から引き継ぐことが多いので、経緯を気にした前任者に余計なことをされることがちょくちょくあった。  出張から戻った翌日、あれ、と杉田に声を掛けられた。今日、紀谷との打ち合わせを入れたと言う。 「いやだって、名波の出張の戻りが未定になってたから」  杉田はいつもの調子で軽く言う。 「いい話なんだから、紀谷さんにも早く教えたほうがいいだろ。やっとコンセプトも決まった、経営会議の受けもよかった、年末のファッションショーでお披露目できることになった、読モを使ってくれって話まで来た。万々歳じゃないか、やる気も出るってもんだ。主催はティーンのファッション誌だから、伽羅めるの知名度考えたらちょうどいいと思うんだよな」 「まだ決定じゃないんだろ? ユニセックスで役員会議通すの苦労したのに、読モじゃイメージが変わる」 「贅沢言うな、めちゃくちゃいい話だろうが。大体買うのはほとんど女の子だって。男がルームウェアなんか買うかよ」     
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