11人が本棚に入れています
本棚に追加
私は勉強も好きだ。正当な理由で教科書という本を読めるし、社会に出て役立つ知識を限られた冊数で迷うことなく手に入れることができる。だからこそ我が儘を言ってよかったのなら、私は大学受験のために、中高一貫で国立大の受験まで面倒見てくれる進学校に行きたかった。世田谷教育学園なんて私が夢に描いていた学校生活だった。制服なんて何でもいい。多少遠くても頑張って早起きする。それよりも勉強を沢山教えてくれて、私の知らない世界をたくさん見せてくれる学校に行きたかった。
だから母が受験勉強について言い出したときは渡りに船だと内心踊っていた。しかし母が持ってきた願書は女子短大までついている小さな女子校だけだった。本屋で過去問題を眺めたが四年の時点でほぼ解けたのでつまらなかった。もっと難しいものをやりたいと塾の先生の力も借りてお願いしたら、面談の席で母の癇癪がまた起きてしまい、塾も辞めることになった。タブーが増えた。
決局、女子校は初日に合格した。奨学金も貰えることになったので家計の助けにもなった。合格通知をもらったその夜、我が家は母の手作りのショートケーキでお祝いをした。甘ったるいようで優しい口溶けのクリームを顔につけて頬張った。母の優しい笑顔が消えなかった。
最初のコメントを投稿しよう!