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窓の外を打ち鳴らしていた雨はいつの間にかいなくなり、太陽が眩しく照らしていた。私のペンが止まったとき、私は名状しがたい奇妙な声を上げながら、ベッドに倒れ込んだ。満足感を覚えて、思わず笑いが止まらなくなった。
早く誰かに見せたい。
そんな言葉が私の頭の中に浮かんできた。
私はすぐに優子に電話をして、学校に呼び出した。明らかに優子は狼狽していたが、私は返事もろくに聞かずに電話を切って、皺の取れてないブラウスとスカートを着て学校へ走っていった。
早く誰かに聞いてもらいたい。
言葉が鳴り止まなかった。
私は居ても立っても居られなかった。曲がり角で転びかけ、改札に引っかかり、電車の中で貧乏揺すりも止まらず、何度もボロボロの脚本を読み直していた。
早く誰かに会いたい。
言葉が私の胸の中で爆発していた。
最寄り駅についてからは全力疾走であった。私があんなに走ることなんていつぶりだろうか。あの夏は全部可怪しかった。でも、あのときほど走っていて気持ちよかったときはなかった。
ノンストップで走り続けて、息を切らして学校に辿り着き、そこで私は、校門が閉まっていることに気づいた。そしてそこで、今日が施設点検で休校日であることを思い出した。
私は、先程までの心地よい疲労感が一気に身体に押し寄せて、その場でへたり込んだ。もう、歩きたくない、このままここで寝てしまおうかと思えた。すると誰かが近づいてくる足音が聞こえた。私以外にもこんな醜態を晒すお馬鹿さんがいるのだろうか。
「こういう日に来るお馬鹿さんが一人はいると思いましたが、まさかそれが貴女とはねえ…」
足音の主は私に向かって呆れ返った声で話しかけてきた。私は振り返った。
そこには富浦先生がいた。
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