私の十八の夏が終わった頃

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 本番一週間前を切った頃、私と優子が今日のダメ出しをお互いに出し合っていた帰り道で、突如、見知らぬ男に声をかけられた。しかし、その声に聞き覚えがあるために私は立ち止まってしまった。その人は私が振り返ったことを喜びながら近づいてきた。 「薫、覚えてくれていたんだ。」  そこにいたのは私達が付き合っていた頃と似ても似つかないテイラーであった。彼女の望む姿へと変わっていた、それこそ見間違えるほどに。 「薫、会いたかったよ。元気だったかい?」  テイラーはそれでも美しく、色気があり、そしてあの時よりも尖った刃のようだった。 「せっかく逢えたんだ。今晩どうだい?」  煙草の臭いがあの頃よりも気になった。優子はまだ気づいていないのか、怯えていたので、私は彼女の前に立った。悪いが文化祭の練習があるから、無理だ、私はそう断った。  その言葉にテイラーから笑みが消えた。 「そっか、君も普通になっちまったのか。」  あの暗い瞳が私を見つめた。それはわずかな時間だったが、はっきりと理解した。私達は愛し合っていたが、それでも私達は理解し合えなかったのだ。テイラーは踵を返した。その背中をしばらく見つめていたが、私は駆け出して呼び止めて、何も言わずチケットだけを手渡した。  来なくたっていい。眼の前で破かれたっていい。それでも、これが今の私だ。
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