私の十八の夏が終わった頃

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 本番前日はまさかの大学模試で、私は一科目終わるたびに笑ってしまうほど出来なかった。ただし、志望校だけは、その時の私の理想を、嘘偽りなく書けた。  試験が終わり、会場を出ると優子や澤達が待っていた。引率の目崎がくたびれた顔をしつつも笑って迎えてくれた。 「どうしても、全員で迎えに行きたいと言って聞かなくてな…」  そして、まず澤が口を開いた。それに続けとみんなが口々に呼びかけてきた。 「ゲネプロしないで本番ってわけにはいかないじゃないか。」 「薫、待ってたよ。」 「最後の稽古、お願いします。」  私はその声に応えるように駆け出した。  長くはない私の人生において、あの十八歳の旅は、お芝居で言えば第一幕のフィナーレにふさわしかった。私が忘れないためにも遺しておくことは間違ってなかったことだ。  しかし本当の第一幕のフィナーレはこの舞台にある。あの頃の私の人生のすべてがそこにあった。  そして、最後の幕が上がった。
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