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『鳥たちへ』 P30修正稿
雀、むせて泣いている。
鴻巣 「メソメソしててもおまんまにはありつけんのよ、股開くか、家畜になるか、戦うのか、アンタが決めなさいよ!」
鴻巣、廉太郎の部屋に雀を押し込む。
廉太郎 「お嬢さん、どうしました?」
おずおずとした廉太郎、泣いてばかりの雀。何かをひらめいた廉太郎。ラジオを取り出し、歌を聞かせる。その歌を聞いて雀は泣き止むが、十六夜の言葉を思い出す。
十六夜(声) 「雀は本当に歌がうまいし、歌が好きだね。名前の通りだ。」
雀、顔を上げて、廉太郎の手を握る。
雀 「将校さん、私を街に連れて行って!そのためなら何でもする、必ずするから!」
廉太郎 「え、でもそしたら君はここの人に追われたりするんじゃ…」
雀 「お願いします!」
廉太郎 「…ええい!!」
廉太郎、雀の手を引いて逃げ出す。
鴻巣、笑いながら声をかける。
鴻巣 「ほら、雀が逃げたよ!まったくどこに行くんだぃ!待ちなさいよ!
…ったくどこへ行っても構わないけど、メソメソ泣くんじゃないよ!」
(暗転)
場面はテレビセットの前。司会が雀を紹介する。
司会 「戦争にすべてを奪われて、それでもこの声は私のもの、少女が歌います。」
音楽のイントロが流れる。雀、前に出てマイクを握って話し出す。
雀 「五番、八重野雀。私もやりたいことをちゃんと言います、お詫びはこれからみんなにしていきます。みんなに届くように歌います。心に花を、唇に歌を。」
雀、独唱。
周りの出演者も手拍子から次第に一緒に歌い出す。
鴻巣、ニヤニヤしながらその様子をテレビ越しに見ている。
遠くで見ていた廉太郎やほかの出演者もみんなで歌う。
審査員が鐘を鳴らそうとするも、司会に制止される。音楽が続き、雀は歌い続ける
雀、間奏になり、マイクを観客にむけてセリフを叫ぶ。
雀「どうか、みなさんも、ともに歌声を!」
観客を巻き込む大合唱となる。
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