0人が本棚に入れています
本棚に追加
「今夜はよく晴れるので、きれいな流星群が観測できそうです……」
テレビからそう聞こえてきた。
恐らくは天気予報か何かのコーナーだろう。
それに普段なら、だいたいこの時間に起きてくるので、この人の声はほぼ毎朝聞いている。
とはいえ、今日は少し早く目が覚めてしまったので、今は朝ごはん中だけれど。
「蒼。父さんと母さん、今日は帰ってくるの遅くなるから……もしかしたら明日になっちゃうかもしれない。」
「分かった、自分でご飯作るよ。」
「ごめんねー。」
「ごめんな。」
『天辺 蒼』っていうのが僕の名前。
僕が高校生になったあたりから、両親が本社で仕事したり、地方で仕事が入ったりして家を開ける……っていうのが増えたけど、もう慣れた。それは多分両親も分かってると思うんだけどね。
それに、明日は金曜日だけど祝日だから学校はない。そういうのも含めれば今回は大きな問題もないだろうし……。
朝ごはんを食べ終えて、歯を磨いて、トイレに行って……いつもとなにも変わらない。少し違うのは時間だけだ。
とはいえ、家に居てもすることがないので、ちょっと早いけど学校に行くことにした。
案の定、学校には早く着いてしまったけれど、教室で談笑しているいつものメンバーに変化はなかった。まぁ、普段の僕が特別遅いって訳じゃないし、そこが変わる訳ないんだけどね。
そんなこんなで特に大きな問題も起こらず授業も終わり、学校での1日はいつものように終わりを告げる。
特に残るような用事もないので家に帰ると、ドアには鍵がかけられていた。
さすがに2人とも出発しているか……。どこかでまだいることを期待した自分を、たた忘れようとして頭を振る。
……今夜は星でも見るか。
そのお陰だろうか、柄にもない提案が頭に浮かんできた。すぐさまそれも否定しようとしたけれど、なぜかそれができない。
家に入り、荷物を置き、手を洗い、うがいをし……その間も脳内で〈見に行く派〉と〈家に居る派〉のバトルが繰り広げられたが、結局自分の中では、明日が休みだということと、今日帰りが遅くなっても何か言ってくる人がいないことが後押しして、星を見に行くという方向で決定した。
最初のコメントを投稿しよう!