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毎日、君に恋をして
「ーそんなわけで俺を、助けてくれたのが君だったんだよ」
「ごめんなさい。覚えていないわ」
帰ってきたのは現実的かつ冷酷な答え。真っ向からの否定に、彼の心は激しく傷つく。
「そう、か」
「私、もう疲れたのよ...死なずに此処で生き続けることに。これ、見てよ。ずっと前にここに落ちてたカメラ。もうバッテリー切れ。使えないの。私も同じよ。形はあっても中身が空っぽ。時間が止まってしまったみたい」
俯き加減に彼女が紡ぐ。
「でも、君がいないとここは」
「ええ、精霊である私が居なくなればいずれは寂れてしまうでしょうね。でも、もうどうでも良くなったの。これ以上、チンケな用水路の精霊をするくらいだったら死んで地獄へ行った方がマシよ。私が私になってからの50年は重く、長かったわ。あなたの想像以上にね」
そう、彼女は人間ではなかった。
彼があの不思議な現象の正体を知るべく調べて分かったのは、彼女は、
精霊ー八百万の神、自然に宿る霊。年を取らず、司る対象を守護・整備する者。
そして、彼女が司っているのは、「用水路」だった。
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