01-実家の見える景色

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01-実家の見える景色

 気がつけば、別の場所、別の世界で、別の人生を歩んでいる。  いつのころからか分からないが、とにかく僕は、そういう生き方を余儀なくされている。  夢を見続けているのかもしれないし、本当はとっくに死んでいて、いろんな世界の人間に憑依してるのかな、と思うこともある。  けど、いまさら悲しむ必要もないだろうし、そんな暇もない。だって目の前には常に新しいことが、どんどん起きているのだから。  地球ではなさそうだな、と思う。景色が違う。僕は、しばらくその景色に圧倒されていた。  赤みの強い細かい砂に、昼間なのに夜のような、濃紺の空。星だって無数に輝いている。月はない。赤い砂で形作られた、風で今にも崩れてしまいそうな危うい鋭角の山の脇に建っているのが、僕の実家だ。実家といっても、僕が家を出てから建て替えたものだから、生家ほどの馴染みはない。ああ、この景色を眺められるのも今日が最後だな、と思う。ミサワホームのいいやつなんだぞ、と父が自慢していたな。元気で暮らしてくれるといいな。タイルを模した濃茶の壁が、赤い砂によく映えている。     
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