01-実家の見える景色

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 僕は最後の記念にと、携帯電話でその景色を写真に収めた。今どきスマートフォンじゃないなんて古臭いけど、カメラの性能は、下手なスマホなんかよりずっといいんだ。小さな画面に切り取った幻想的な実家の姿に満足して、僕は携帯電話を折りたたんでポケットにしまう。  僕は地面を軽く蹴って浮き上がった。飛ぶ、というのとは厳密には違う気がするけど、おおまかに言ってしまえば同じだろう。原理はよく分からないけど、空気を蹴ってその上に立っていることができる技術があるみたいだ。操作感は、サーフボードとかスノーボードとかに近いかもしれない。慣れればそう難しいものでもない。  本当は工事中で立ち入り禁止の部分を、飛んで乗り越えてきてしまっている。けど、工事している地面に直接触れたわけではないから問題はないだろう。実は僕、高速道路のサービスエリアにいたのだ。バスで空港に向かっている最中。別の星に向かっている。  工事中のおじさんたちを邪魔しないように高めの場所を飛んで戻ると、友人がまごまごしていた。高校時代からの友人なんだが、昔からどうも要領を得ない。 「この先、もうATMないらしいんだよ。ゆうちょのお金、引き出しておいたほうがいいってさ」  そう言って、操作しているATMを見せてくれるんだが、ああ馬鹿、お前、暗証番号丸見えだぞ。しかも、6666って、そりゃまたすごい番号だね。 「次の星でゆうちょ使えるかわかんないからさ」     
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