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「ねぇ、ここをこうして…このアングルから…ね?でさ…」
「……よし……」
「…ねぇ?聞いてる?」
「…あ、はい…すみません。」
「寒いし、早く終わらせたいからしっかり聞いててよね?」
「はい…」
そっと構える君の手がどうしても届かなくて。
ずっと、けたたましく感じていた音でさえ愛おしくて。
「ん。良く取れてる…もっと的を絞って。全体を写そうとするから撮りたいものとか写したいものがぼけるの。」
手が触れる。
やるせない気持ちがゆっくり、じわりと体を傳う。
「分かりました…、」
「よし、これで良いよ。私、この後予定があるから。」
立ち去ってしまう。
また言い出せず終わるんだ。
嫌だ。
「あ、あの!」
「ん?どうかした?」
「あ…え、えっと…なんでもないです…!今日もありがとうございました。」
「うん!いつでも誘って。撮り方くらい教えられるから。」
いつか。言いたい。
いや、言ってやるんだ。
「じゃあ、また!」
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