雪の積もらない街

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 自分の白い吐息が視界に入り込む度に、隣の彼女を見なくてはならないと言い聞かせる。それでも、横にいる彼女を見れない。  ビニールシートに横たわる二人はどんなふうに見られているのだろうと場違いなことを考える始末だった。  「好きなの」  今度ははっきりと聞き取れた。その声を聴いて逃げられないと思った。そして、逃げるという考えを浮かばせた自分に驚いた。  ようやく出た言葉も、そうかという短いものだった。  流れる星がひとつふたつと見え、時間が流れるごとに少しずつだが冷静さを取り戻すことができた。  冬の空気が冷や汗と相まって、肌を刺激して震えを走らせる。指先が痺れて、痛んで、現実をようやく認識した。  青いビニールシートに潰された植物のにおいが鼻を刺激する。青臭い。  少し離れた場所で同行していた天文サークルのメンバーの声が聞こえた。  そうしてようやく、石膏で固められたような首を無理やり動かした。  長い髪と白い肌、細い腕。こちらに顔は向いていないため表情は読み取れない。  彼女と出会ったのは、大学に入ってからすぐの天文サークルの新歓だった。隣の席で初めて話すことになって、俺たちの会話はそれなりに弾んでいた。人と話すことが苦手なので、自分自身でもそれが意外なものであったと覚えている。     
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