雪の積もらない街

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 何処かの誰かの言葉が浮かぶ。「愛されなかったということは、生きなかったことと同義である」。このままでは、俺は彼女に生かされるだけで彼女を生かすことができないだろう。  そう思って、初めて自分が誰かを生かしてみたいと考えていたことを知れた。  漫画とかドラマだとかに結局あこがれていたんだと思う。  付き合ったのも、自分を好きな人がいることに酔っていたからだ。  醜悪だ。誠実さの欠片もなく、呆れるしかない。  目の前が明るくなる。交差点で信号機があった。手持ちの懐中電灯の灯りは切れていた。ただただ信号機の赤色が輝く。光に誘われる虫のように近づき、その前で何分も足を止めた。  ふと、赤信号で足を止める俺を催促するように雪が降り始めた。この町で雪が降るのは珍しい。でも、きっと、積もることはないのだろう。  前には、変わらない信号機。  後ろは、いつの間にか化け物が真っ黒な口を開けていた。  無視して罪の意識を持ちながら知らん顔をして進むのか、元の場所に戻ろうと化け物に飲み込まれて楽になるのか。どちらが正しいのか決められないまま、積もるはずのない雪を見て俺はまた、深いため息をついた。
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