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うしくんがステッキを振ると空に虹の橋がかかりました――。
うしくんは、カエルくんと虹の橋を渡り、渡った先でいつまでも楽しく暮らしました――。
「はい。おしまい。」
秋彦が本を読み終えぱたんと閉じると、膝の上で少女が嬉しそうに顔をほころばせた。
楽しそうに見こちらを上げる、その笑顔に秋彦もつい嬉しくなる。
少女の小さな指が絵本のカラフルな表紙をすす……となぞる。
「カエルくんと虹の橋」、そう題されたカラフルな表紙の絵本。
淡い色遣いで楽しそうにうしくんとカエルくんが橋を渡る姿が描かれている。
秋彦も何度も読みきかせをしていくうちに、この絵本がすっかり好きになってしまっていた。
「お兄ちゃん、ありがとう。
またご本を読んでね。」
そう言って少女は秋彦の膝の上から飛び降りて、ぱたぱたとどこかへ駆けていった。
可愛らしい後姿を見守りながら、いい息抜きになったかな、と秋彦は思った。
傍から見たら、秋彦とその少女――エリィの関係は、年の離れた兄妹に見えるだろう。
しかし、秋彦とエリィには特に血縁関係はない。
この市立図書館でたまたま出会ったに過ぎない関係である。
だが、その関係の希薄さが今の秋彦にはちょうど良かった。
秋彦は窓の外の空を見上げた。
雲一つない晴れやかな空がそこには広がっていた。
先ほど読んだ絵本のように、虹の橋をかけることができたらさぞかし綺麗だろうな。
秋彦はそう思い、目を細めた。
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