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画集~向日葵の傍らに~
きぃちゃんから暑中見舞いが届いた。
それは、淡い水彩画が描かれた絵葉書のようでもあった。
きっときぃちゃん──新田貴一君が描いたものだ。
きぃちゃんは昔から絵が上手かったから。
葉書には、入道雲と青々しい葉を携える木の絵が涼しげに描かれていた。
夏休みによく行っていた、図書館への小径……。
そんな風景が思い浮かんで、郷愁にかられた。
≪松宮 彩貴様≫
そんな書き出しの葉書には、時候の挨拶や≪僕のことを覚えてますか?≫というきぃちゃんらしい控えめな前書きがあった。
それに次いで、きぃちゃんが画集を出版したという近況が書かれていた。
(……きぃちゃん、すごい……。夢が叶ったんだ)
喜びと同時に切なさが胸に広がった私は、衝動的にきぃちゃんに返事を書いていた。
「会いたいです」というメッセージを添えて──。
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