唯一の男

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「だって。ここ、どうぞ。」 わざとらしく、真斗が自分の隣の椅子を引いた 「あ、ありがとう。」 トレイを置いて、珈琲を持ち 彼の隣に腰掛ける こういうふうにカウンターに座るのは、いつぶりだろう ここで働き出す前は、週3くらいでお客さんとして こうやって店長と向かい合っていたのに 珈琲に口を付けると 店長のように優しい苦味が口に広がり 良い香りが鼻から抜ける そういえば 私はいつも仕事の後に来ていたから 朝一で来る真斗と出くわすことは一度もなかったな 夜は遅くまで仕事なのだろうか? それとも、仕事の後はデートでもしているのか、。 「真斗は、彼女いないの?」 「ゴホッ、な、急だな?」 一瞬、むせた彼は口元を拭うと 「いないよ。」 一言捨てるように言った
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