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「うわあっ」
足を持たれる。その場から動けない。
「クソッ」
私は乱暴にマントを振った。風が起こる。羽が矢となってそこらの敵を串刺しにする。
でもすぐに復活する。生きているもの相手なら効果抜群なのに。こいつの属性はなんだ?この世界には誰もが一つだけ一つのエレメントを持っている。一つ以上持っているのは特別なものだけだ。
私だって風のエレメントしか持ってない。
嫉妬で心が燃えた。
私は腰に差していたクレイモアを抜いた。男性のものよりは大きな剣だ。作りもいい。
それで足に捕まってる腐乱死体の腕を切った。
そこに響く城の外からの雄たけび。ドラゴンだ。背筋が震えた。
「もうやめろ、ドラゴンも相手にしたいか?」
「貴様、ドラゴンも操るのか?!」
私は驚くしかない。
近頃魔王が復活したと騒がれている。こいつが魔王?
実をいうと私も首都ミランダに自分の街から行くとこだ。勇者の選定の儀がある。私は勇者に選ばれたい。魔王を倒すなんてなんてぞくぞくするだろう。なのにこんなちんけなヴァンパイヤを追ってきた結果がこれか。本当についてない。
「いや、すまない、私が悪かった。ついむきになってしまったな」
私は自慢の愛想笑いをした。
この笑顔で落ちる女は五万といるんだ。もちろん男だって落とせる。
そう思っているのに男性はにこりともせずに奥の子供に話しかけた。
「もう大丈夫だ。また襲われたらそこのカシルに言え。俺は寝る。もう起こすな」
それだけ言って奥に引っ込んでしまった。
何なんだ?!こいつは。この私を無視するなんてありか?
私の脳内が怒りでぐるぐるする。私はこいつに負けたわけじゃない。引いてやったんだ。
そう思うしかなかった。
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