祖父と僕

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「話を戻そう、捕まって最初に泥棒と会った時に無罪を主張したんだ。」 『俺は盗みなんかしてねぇ、信じてくれよ弁護士さん!俺はただ、家の庭に入った帽子を取りに行っただけなんだ!』 『なるほど、防犯カメラが被害者の家に取り付けてあったのだが、君が庭を飛び越えた時点で帽子を被っていた。つまり君は帽子を2ついつも被っているということかな』 「ということさ、防犯カメラが設置されてるのにも気付かない。随分と間抜けで愉快な奴だったよ、ハッハッハ。」 「で、その泥棒さんはどうなったの?」 「もちろん、捕まったさ。今はもうどこにいるのかわからない。葉書を一度だけ送って来てくれたことがあったんだがなぁ」 そう言う祖父は、ひたすらに懐かしそうに目を細めた。その泥棒は今どこで何をしてるのだろうか。 祖父が助けた人だもの、きっとどこかで良い人間になって生きてるに決まってる。 そう伝えると祖父は「そうだと良いなぁ」と、どこかぶっきらぼうにそう答えた。 変なの、そう思いながらも僕は祖父と手を繋いで、坂を登りながら歩いていく。 その坂は急で、踏ん張ってないと達磨みたいに後ろに転がってしまいそうな坂だった。
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