始まりは突然に

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日本の石川県に1人の学生がいた。彼の名前は虹谷司(にじたにつかさ)。平均身長の平凡な顔立ちのどこにでもいるような普通の学生だ。 この日も、夕方遅くまで図書室にこもり、SECOMがかかるギリギリまでの時間を過ごしていた。 「おーい、そろそろ帰れ」 戸締りにきた先生に追い出される形で、帰り道を1人歩いていた。グランドにいる野球部も地面をならしていて、そろそろ帰る時間なんだと思う。歩き慣れた道を進み、なにを思ったのか途中にある公園に立ち寄った。 【不審者が出ます】 入り口前にデカデカと置かれた看板を尻目に中へ進む。すでに公園は無人と化していて、子どもも井戸端会議する主婦もいない。静かな中、砂場に動く影が見えた。 虫にしては大きい様な、でもシルエットが虫っぽい。 おそるおそる近づくと、約30㎝のカマキリが威嚇のポーズを構えていた。 「げぇ、虫苦手なのに勘弁してよ」 逃げようかと後ろへ下がると、カマキリも同様に前へ進む。逃げる隙はない。諦め、近場に手頃な武器が落ちてないか見る。 が、視線を外したのがマズかった。 視界の端に勢いよく飛びかかってくるカマキリが見えた。とっさに落ちていた拳大の石をカマキリの顔面にぶち込んだ。 嫌な音と感触に顔をしかめたが、確かな手応えがあった。恐る恐る手元を見ると、潰れた顔のカマキリが横たり痙攣を起こしていた。吐きそうになったが、念のため身体全体を潰した。 落ち着いた所で溜息が出た。 助かったという安堵感と、虫相手に何やっているだと冷静になってから込み上がってくる恥ずかしさだ。 人がいなかったから良かったが、ハッスルした姿を思いだして身悶えした。うぉー黒歴史ぃ。 『スモールマンティスの討伐を確認、虹谷司を適合します。……適合できました。世界ファーストキルの特典として、ボーナススキル【早熟】を獲得しました。経験値を獲得しました。虹谷司のレベルがLv1からLv3になりました。新しい職業(ジョブ)を獲得しました』 スラスラと言葉が頭に流れる。 え、討伐?…ってさっきのカマキリのことだよな。 次々とゲームでよく聞く単語が並べられる。さっきまであったカマキリの死体が光の粒子となって消えたので更に驚いた。 その場へ行くと、カマキリの代わりに緑色の小粒の石が落ちていた。宝石みたいでキレイだったから拾って帰った。
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