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「……別に。違うよ」
「りっちゃん。僕の日記、読んだんだよね」
風が吹く。
パラパラと、サイドテーブルの上の本がめくれる。康之はそれを手に取った。
それは康之の日記帳だった。
「あ、それは……庭に落っこちてたから、テーブルの上に……」
「嘘だ。僕はいつも部屋でしか日記を書かないもん」
頭の中に蘇る。
康之が毎日書いている日記の中身。
見るつもりなんかなかった。でも、最近ひどく疲れた様子の康之が気になって、駄目だと思いながらもある日ページを開いてしまった。
その中には、彼の押し込められた感情が綴られていた。
〝りっちゃんが転職しないですむにはどうしたらいいんだろう〟
〝僕のせいなのだろうか。僕のせいで、りっちゃんは職場を変えてばかりいる。りっちゃんの体に悪影響を及ぼしてしまった〟
〝りっちゃんと別れるべきなのだろうか。僕はきっと、りっちゃんのそばにいてはいけない疫病神なんだ……〟
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