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――康之は小さい頃から霊感体質だった。
幽霊が見えるのは当たり前。さらにそれを怖がらずに普通に話しかけたりするものだから、康之の周りにはしょっちゅう人恋しい幽霊が集まっていた。
そんな彼のそばにいたせいで、私も気付かぬ間にその影響を受けていたらしい。
元々霊感などなかった私だが、いつからか私にもぼんやりと幽霊が見えるようになっていた。
クリエイティブな職場は時にブラックと呼ばれる環境もあり、過去には過労死を遂げた人もいる。彼らは職場のビルの出入り口に、廊下の片隅に、私の席の真後ろに立っては、ニヤニヤと笑った。
悪霊が身近にいるということは思った以上に怖いものだ。ふと気付いたら、靴を脱いで職場のビルの屋上に立っていたこともあった。
よくないモノに目を付けられたら、自衛のため職場を変えるしかない。
〝霊感を無くすには?〟
〝取り憑かれないようにするには?〟
〝りっちゃんが気持ちよく仕事をするには?〟
康之はいつも笑顔で私のサポートをしてくれる。でも、彼の日記帳には連日私を気にかける言葉が綴られるようになり、彼は私以上にノイローゼ状態になっていたように見えた。
私は思ったのだ。
きっと、私がいない方が康之は幸せになれる……。
目を覚ますと、私はベッドで寝ていた。
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