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「はい。失業した方が然るべき手続きを踏めば、一定期間お金がもらえる制度ですよ。倒産などの会社都合の退職であれば基本即日で支払われます。自己都合退職ですと、もらえるまでに三ヶ月程時間がかかる場合がありますけどね。給付制限期間というやつです」
「知識としては知っていますよ。私は毎回退職日の翌日に次の会社に移っていたので、制度を使ったことはありませんが」
そう答えると山田さんは笑顔になった。
「そうですか。では話が早い。あのですね、この世界にも似たような制度があるのですよ」
「失業保険と、似た?」
「ええ。転生保険というんですけど」
転生、と呟く私に、彼は大きく頷く。
「亡くなった全員が資格を持つ制度です。この制度を使えばまた現世で新しく生まれ変わることができるんです。利用しますか?」
思わず遥か下、自分の家の庭を見下ろす。
眼下には私の死体が横たわっていた。
*
私は三分ほど前に死んだ。
死因は服毒死だった。
インターネットで手に入れたあれやこれやをコツコツと溜めて、先程一気飲みしたのだ。致死量を上回るあれやこれやは、あっという間に私を死に追いやってくれた。
私は山田さんに視線を戻すと、ため息をついた。
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