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私、結局地獄行きかよ。
私は冊子を散り散りに破いた。一年でも三ヶ月でも地獄の業火に焼かれるのはごめんだ。山田の野郎、トラブるのが面倒で説明を端折ったな。
私は庭に降りた。
月額四万九千円、小さなアパートの自分の部屋。一番家賃が安い一階の中部屋だ。その庭に置いていた中古のデッキチェアで、私は眠るように死んでいた。
脇のサイドテーブルには水の入ったコップと、致死量を超えるあれやこれやが入っていたピルケース、そして一冊の本。
私はその光景をじっと見つめる。
そして、閃いた。
山田さんに私が他殺だと証明できれば、私は〝自己都合死〟として地獄に行くこともなく、即日で転生できるのではないか……。
「ただいまー」
ナイスタイミングで部屋の奥から声がする。同棲中の康之が仕事から帰ってきたようだ。
ガラス戸越しに、上着を脱ぐ康之の不思議そうな顔が見えた。
「あれ? りっちゃん、今日定時で帰れたの? もう寒い季節なんだから、そんなところにいたら風邪ひくよ」
「康之、ちょっとこれを見て」
私はデッキチェアに横たわる自分を指差した。康之はカラカラと戸を開けるなり仰天した。
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