転生保険

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  「山田さん。あのですね、私のさっき話した死因の話なんですけど。勘違いしていました。私この人に殺されたんです。他殺です」 「え!? 僕が!?」 「山田さん。彼は私の恋人なんですけどね、彼はいつも私のために通販でサプリのマルチビタミンを買っているんです。しかし先程私はその錠剤を飲んで死んでしまいました。サプリを私のピルケースに補充しているのはいつも彼……。きっと彼がサプリを抜き取って、致死量を超えるあれやこれやにすり替えたに違いありません」  山田さんは康之に視線を向けた。  彼は呆然としていて、まともに話せそうな雰囲気ではなかった。 「では他殺ということで」  私の意見はあっさりと認められた。なかなかに突っ込みどころがあったはずだが、山田さんも雑な仕事ぶりである。  でも、これで晴れて無事転生することができそうだ。  康之が立ち竦んでいる脇で、山田さんは私の履歴書を書き直している。それを見て私はほっとした。  この世界とも、この私ともようやくおさらばだ。  ううんと伸びをし、深呼吸をした。面倒の多い人生だったけど今は清々しい。次に転生する時にはベネチアのゴンドラ乗りにでも生まれ変わりたい。  これでやっと終わる……。  感慨に耽っていると、ふわりと風が吹いた。  幽霊となった私は風など感じない。ただ、木々がざわめき、私の死体の横にある本がパラパラとめくれた。  ふとその本に手を伸ばす。  しかし幽霊である私はそれに触れることができない。  
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