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「山田さん、早く行きましょう」
私はまだ書類を書いている山田さんを急かした。
しかし同時に、山田さんの持つスマートフォンがチロリンと鳴る。どうやらメールのようだ。
「すみません。五丁目の方で悪霊が女子高生の体を乗っ取っているとのことで、応援要請が来てしまいました。すぐ戻りますからちょっとこの辺りに浮遊しててください」
そう言うと、山田さんはまたどこかに飛んでいってしまった。
転生への道がどんどん遅れていく。
……いや、これはチャンスだ。
私は山田さんの影が見えなくなったことを確認すると、康之に近づいた。
「康之、よく聞いて。自殺者は死んだら地獄行きらしいのよ。死んだ人は転生保険っていうのでまたこの世に生まれ変わることができるらしいんだけどね、自殺は保険屋さんに対して心証が悪いのよ。だから話を合わせて私を他殺にしてちょうだい」
「自殺……やっぱり自殺なんだ。りっちゃん、どうしてそんなことを」
康之はどうでもいいところに引っかかっていた。
私はため息をつく。
「もう、終わったことはどうでもいいでしょ」
「よくないよ。僕はりっちゃんと一緒に生きたかった。結婚したかった。子供は十人欲しかった……」
「もうねえー、疲れたの。人生に疲れちゃったの」
いつまでもメソメソとしている康之に私は呆れた。
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