第一章 出会い

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「じゃあ、僕から。花音さんは先ほどの旅行会社で働いているんですか?」 「いえ、実は私、フリーのツアーコンダクターをしていまして。今日はあるツアーの打ち合わせがあったんです」 「へー、そうだったんですか」  社員ならわかるが、フリーという点がちょっと意外だった。そういう独立性が高い女性には見えなかったからだ。 「そうは見えないでしょう」  こちらの思いを見透かされたようだ。 「いえ、そんなことはありません。でも、フリーという点はちょっと意外だったかな」 「そうかあ、やっぱりそうですよね。私って頼りなく見えるみたい」 「スナックでは意思が強そうに見えたけど…」 「ああ、それはマスターに隙を見せるなと言われているからです」  店で愛想がないように見えたのは、意識してそうしていたと初めて知る。 「そうだったんですね。そもそもなかなか会えないし、声をかけてもほとんど会話をしてくれないし。マスターに訊いても何も教えてくれないし」 「それもマスターの戦略なんです。敢えて謎多き女になれというのが口癖なんです。そのほうがお客様は何度も来てくれるって…」 「なるほどなあ。僕だけじゃなく、みんなすっかりマスターの戦略にはまっていたわけですね」 「すみません」 「花音さんが謝ることじゃないですよ。店での花音さんを見ていると、僕のことなんかまったく眼中にないように思ってたから、今日花音さんのほうから声をかけていただいて驚いているんです」 「私、高山さんが初めてお店にいらっしゃった時から、ずっと気になっていたんです。だから、マスターにお願いして高山さんの情報を教えてもらっていたんです。実は、今日お会いできたのも偶然ではないんです」 「えっ、どういうことですか?」
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