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「同じ会社の池田さんから事前に聞いていたんです」
「池田?」
すべて理解した。池田は高山の同僚で、一緒に飲むことも多い。当然、花音の働く店にも一緒に出掛けている。そして、先ほどまでの会議にも同席していた。会議終了後、事務所に帰るといった高山に対し、池田は寄るところがあるということで、ビルの出口で別れたのである。あの後、池田は花音に連絡したのだろう。
「ごめんなさい」
そんな手の込んだことをせずに、ストーレートに言ってくれればよかったのにと思いながら、花音がいじらしく思えた。
「いやいや、それも驚いたけど。でも嬉しいですよ。僕も初めてあのお店に行って、花音さんに会った時、一目惚れしたんですから」
「本当ですか?」
「どうせ、池田から聞いているんでしょう」
「はい」
「素直でよろしい。ちなみに池田は好美ちゃんが大好きなことは知っているよね」
「はい。もちろん、それも知っています。好美ちゃんと池田さんはとっくに付き合っています」
「えっ、そうなの。参ったなあ。池田のヤツ、僕には何にも話さないくせに」
「きっと、照れてるんだと思います」
「まあいいか」
「ということで、高山さん、私と付き合ってください。それがさっき私が言いたかったことです」
そう言って、右手を隆一の顔の前に差し出す。握手をすることで、認めてほしいという意味なんだろう。これまで、女性のほうから付き合ってほしいなんて言われたことや、こんなストレートな告白を受けた経験のない隆一は少し戸惑ったが、もともと自分が一目惚れした相手だったので、花音の手を握った。すると、花音は左手を添え、両手で高山の手を包むようにして言った。
「嬉しい」
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