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僕が三年ぶりに出てきたのが意外だったのか、妹は僕を見て固まっている。ぼくから何か話すべきなのだろうけど、妹とはいえ女の子に話しかけるなんて高等技術を僕が出来る筈がない。
固唾を飲んで見守っていると、ピンク色の小さな唇が動いた。三年ぶりに聞いた妹の言葉は、想像の斜め上を行っていた。
「……誰?」
妹は僕の顔を覚えていなかった。と言うより、僕の存在を覚えていなかったと言うべきか。
この家には、両親と妹。を除けば僕しかいない。消去法で両親でなければ僕しかいないのに。
できれば家族の足手まといになりたくないと、ネットでコツコツとお金は稼いでいた。少しでも家族の印象を良くしようと、ダイエットもやって引きこもりなりに努力をしてきたつもりだった。
だけど、それは無駄だったんだ。やはり外の世界は僕には厳しい世界だったんだ。僕は部屋で一生を終えよう。
そう思い部屋に帰ろうとした僕に、妹は更なる衝撃を与えてくれた。
「まさかとは思うけど、お兄ちゃんの彼女さん?引きこもりのお兄ちゃんに、彼女が出来る筈ないわよね」
妹の穂香(ほのか)は、まさか僕の事を女だと思っているのか?僕のどこをどう見たら女に見えるんだ?
「穂香、三年ぶりだから判らないのか?僕だよ、薫(かおる)だよ」
「薫って、お兄ちゃん?嘘でしょう!」
近距離で叫び声を聞いた僕は、耳に大ダメージを受けてしまった。
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