僕、引きこもりを卒業します

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僕、引きこもりを卒業します

結跏趺坐(けっかふざ)に足を組み、精神を統一する。これから踏み出す一歩は、小さな一歩に過ぎない。だけど、僕にとっては勇気がいる大きな一歩なのだ。 目を閉じて鼻から息を大きく吸い込む。数秒止めた後、ゆっくりと口から吐き出した。 僕は努力を重ねた。いじめられていたあの頃とは違う。徐に立上がり、廊下に繋がる扉のノブを回す。 三年ぶりに深夜以外に部屋を出た。この時間、家には両親と妹がいるはずだ。 出来るなら妹には会いたくない。だけど、共働きの両親がいて妹がいない時間はない。せめて最初は両親のどちらかに会いたいものだ。 うちは一戸建ての二階家だ。二階の二間を僕と妹が一部屋づつ使っている。なので、両親よりも先に妹に会う可能性が高い。 それを少しでも回避するために夕食前のこの時間を選んだ。 だけど、現実は非情だ。一階への階段を降りる前に、妹が部屋から出てきたのだ。 二つ下の妹は、虐められていた僕を嫌悪していた。多分僕を罵倒するだろう。僕はそれに耐えられるだろうか。     
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