第1話

1/14
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ

第1話

〇漆黒の城・外観    辺りは闇に包まれ、激しい雷雨が容赦なく降り注ぐ。    そんな中、不気味に佇む中世ヨーロッパ風の居城。 〇同・階段    を駆け上る学生服の少年リン(13歳)。 〇同・主の間    薄暗い広間。    気絶した少年(リンの兄ロート・15歳)が、ヴァンパイアに抱えられている。    ヴァンパイアの口元で鋭い牙が光り――     〇同・階段 ロート(オフ)「うあああああ!」    ロートの悲痛な叫びが響く! リン「兄貴?」    リン、先を急ぐ。 リン「兄貴――!!」 〇同・主の間 リン「兄貴!」    バン、と扉が開く。    振り返るヴァンパイア。    と、その隣には美しいドレスの女性(眷属となったロート)。 ヴァンパイア「遅かったなヴァンパイアハンター・リン」 リン「ヴァンパイア! 俺の兄さんをどこにやった!」 ロート「兄さん? あら酷い。血の繋がった兄弟の顔を忘れたのかしら」 リン「何? なんだお前……」    ハッと、リン。    ロートの首筋に牙の跡が! リン「ま、まさか」 ヴァンパイア「そう、彼――いや彼女こそ貴様の兄ロート。彼女は我が生き血を得て生ま れ変わったのだ」 ロート「力がみなぎってくる。これが、生まれ変わった私なのね」 リン「ウソだ……」    妖艶に笑うロート。もう、男子だった頃の面影はない。 リン「そんな。兄貴が姉貴に……!」    リンのその顔が、みるみる絶望に染まっていく。 リン「あ、ああ……」    そして、膝をつく。 ロート「フフフ。アハハハハ!」    ロートの高飛車な笑いが辺りに響く! 〇汐里学園・図書室    と言う模様が、文庫本につづられている。    読んでいるのは、涼村美空(12歳)。 美空「(わなわな)…………!」    震えている美空。    次の瞬間、文庫本に頭を埋めて、 美空「やばい、やばいよ! お兄ちゃんが女になっちゃった!」 ミク(N)「そう。この小説、ヴァンパイアハンター・リン」 〇イメージ・書店    平積みされたヴァンパイアハンター・リン。 ミク(N)「人間と吸血鬼の戦いを描いたライトノベルで、10代を中心に密かな支持を 得ている」
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!