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アプリを楽しむ女 佐倉優花
恋活アプリというのは女が得するようにできていて、女性は無料であることが多い。
一方、男性は月に3000円位払っている。そんな風な作りになっているからか、自己紹介文には男たちの悲痛な叫びが書かれていた。
『マッチング後に連絡とれない人、返事を返さない人はマッチングしないでください。お願いします』
そんなことを書かれて、誰がこいつにいいね!を押すんだと笑いそうになる。
そういう「危ないやつ」は無視しておいて、
『いい人ができればいいなと思っています!よろしくお願いします』
と無難に書かれた人にいいね!を返す。
「それにしても、このアイコンでどうして登録しようと思ったんだろうな…」
顔がいい人は正直、アプリに登録しなくてもモテるだろう。
アプリには、イケメンと言われる人たちは、ほぼいなかった。
その分、顔はあんまり……だが、性格の良い人や人柄がいい人がいるはずだ。それを自己紹介文から見抜き、アイコンから見抜くのだ。
一番いいのは、友達に撮ってもらったということで、アイコンにすることだ。これが一番自然体だし、写真を撮ってくれた相手がいるということで、多少の友人はいる人間だということが読み取れる。
まあ、写真を撮った相手が女の可能性もあるのだが。
加工アプリで顔を加工するのは、まだ許そう。流行りだし、少しでもよく見せたいという気持ちが伝わる。
でも、ああいうのは女のためにあって、男が加工しても可愛いとは言いにくい。
一番謎なのが、鏡越しに自分を撮ったアイコンだ。どうして自撮りをしなかったのだろうかと疑問に思う。
鏡に映った自分を外側からのカメラで撮るというこの行為が優花には理解できない。そういう男は大した顔じゃないし、自己紹介文も一癖あることが多い。
ただ、自撮りといってもただ撮ればいいのではない、と思う。
女は自分を可愛く見せる角度を皆知っている。斜め上から、顎を少し引いて、手でも添えればバッチリだ。
それなのに、アプリにいる男たちは真正面からまっすぐカメラを見据え、眉間にしわを寄せる始末だ。
うまく撮れないのであれば、人に撮ってもらえばいいのに、それをしないということは、友達がいないのだろうな、と勝手に想像してしまう。
そんなことを考えながら男たちを仕分けするこの作業に
「それでも、顔のいい人間は得だな」
と思ってしまう。
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