壱  彭城日葵 死亡

10/36
前へ
/260ページ
次へ
 これ見よがしにスマホをいじりながらおざなりな地獄行き宣言を繰り返す姉さんは現代の信仰心の欠片もない馬鹿な若者そのものであった。今をときめくピカピカのニートだな。と日葵は思った。 「嫌だあ地獄なんか嫌だよぉ~」 「泣いてもだーめ」 「泣いてないよ」 「・・・え? 泣かないの? おかしいな。年頃の若者は大体ここで泣くんだけど」 「姉さんは年頃の若者への偏見が凄いね。泣いたって何か変わる訳じゃないでしょ?」 「あんた見かけによらず結構図太いね」  のほほんとした感じの見た目によらず意外な意志の強さを見せた日葵に姉さんは感心したのか何なのか初めて日葵にとってプラスになる情報を開示した。 「さっき言ったよね。賽の河原は一番軽い地獄なの。子供にはきつくても実はかなり親切なんだよ。なんせ一応の救済処置が用意されてるんだから」 「え? 救済処置?」 「そっ。せっせと石積みに勤しむ地獄の優等生を救ってくださるありがたーい地蔵菩薩さまがいらっしゃるんだから」 「じぞうぼさつさま?」 「そ。地蔵菩薩が空から舞い降り子供たちを救ってくださるそうですよ? まー蜘蛛の糸的な話ね」 「雲の糸?」 「あーもうっ! 無知無知野郎めがっ。もーいいっあとは身体で学べっ」
/260ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加