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「まあ、落ち着いて向日葵ン。私の話をききたまえ―」
「いや、落ち着くのは渚姉じゃない?」
「考えてもご覧よ」
「渚姉こそちゃんと考えてよ」
「警部殿がさ、この地獄で過ごした期間、知ってるっしょ?」
「・・・三年。だったよね?」
日葵は、渚姉は話し始めたら止まらないのをよく知っていた。
「そ、三年ってさ、文字にすると短いけど。いざ、体験するとものっそい長いんだよ~」
「うぅん、そうなの?」
「そうそう、だって考えてもご覧? 中学生が高校生になっちゃうんだよ? 高校生がキャンパスに入っちゃうんだよ? 幼稚園児が小学生になっちゃうんだよ? 新生児だったらお話ができるようになっちゃうんだよ?」
「なんで急に例えの年齢が下がったの?」
「三年前を振り返って正確に思いだせる? いざ、振り返ってみると相当長くない?」
「う、うん・・・。まあ、そうかもね」
「その上、地獄に睡眠と言う文化はないんだ。実質、警部殿が過ごした期間ってのは体感的には常人の三年の倍くらいになっちゃうんだよ」
「・・・六年?」
「そう、六年。これはもう小学校も大学も卒業できちゃうね」
渚姉はきゃっはっは! と笑った。決して笑える話ではないのだが。
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