伍  愛すれど、死人故

23/45
前へ
/260ページ
次へ
「今回はなんやのん? おもろい事件でも起きたん?」 「うん! と~っても面白い事件が一件!」 「はぁん、そらまたろくでもなさそやな」 「ひどおい。ゆぅくんってば!」  渚姉は口では笑ったまま、しかし鼻から上の表情筋は固まっているかのように、  不自然な顔で、言った。 「今回ばかりはさ、私本気なんだぜ?」  いつも通りの、不自然な顔で。 「ほら、ホレた女には幸せになってほしいもんだろ?」  いつも通りの、ブレブレのキャラクターで、言った。 「はあ、そらまた妬けるこって」  青年は枯れ木にもたれかかったまま、それ以上何も語らなかった。
/260ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加