壱  彭城日葵 死亡

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 声は出る。足もある。手もある顔もある身体がある。耳がある、音が聞こえる。目がある、視力もある。鼻がある、匂いを感じる。神経は見えないけど触ったら感じる。  だけど、息をしていない。  それが日葵の現状。 「・・・・・・ここ、どこ?」  ぼんやりした意識の中必死で考える。何がどうなったのかサッパリわからない。 「・・・・・・あなた、だれ?」  何もかもがあやふやな中取りあえず確固たる事実としてわかるのは自分は今柔らかい芝生の上に座り込んでいて目の前には人がいる。と言う事だけだった。 「やっふー」 「・・・や・・・っふー?」 「面倒だけどあたしはとっても親切だから質問に答えてあげよう。まず一つ目。あなたは間違いなく死にました。二つ目。ココは地獄です。三つ目。あたしは脱衣姉さん。以上」 「・・・・・・・・・・・・・・・?」  目の前の人は無表情のままで日葵の質問に答えた。質問と言うかただの独り言のようなものなのだが。 「うっわぁぜんっぜん理解してないねえ」 「・・・じごく?」 「そう、地獄」 「でも・・・」  日葵はきょろきょろ辺りを見回した。柔らかい芝生。咲き誇る花々。ヒラヒラ舞う蝶々。・・・なんと言うか地獄と言うよりは、 「天国じゃなくて?」 「ここに来る人みんな最初はそう思うみたいだね。だけど違う。ここは地獄の入り口前、神判の間の控室」 「神判の間?」 「割と有名なのに知らないの? 無知だねえ。ちっさい頃お母さんに言われなかった? 嘘つくと閻魔様に舌抜かれるぞって」 「えんまさま・・・」 「そう。ここでは死んだ人間が集まって天国行きか地獄行きかの神判を受ける場所」  目の前の人、脱衣姉さんは矢継ぎ早に情報を詰め込むだけ詰め込んで日葵を混乱させた。急転直下の展開なのでここらで少し休憩したい。 「んでもってあたしはここの雇われ案内人」 「待って待って! ちょっとだけ待って!」 「いいけどあんたあんま時間ないよ?」 「順番に確認させて?」  日葵はようやくはっきりしてきた思考で一番に飛び込んだ情報をまず確認した。 「・・・じゃあ、私は本当に・・・死んじゃったんだね?」 「そうだよ。さっき言ったじゃん」
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