壱  彭城日葵 死亡

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 死後の世界。  言葉は聞いたことがあっても現代人にとってあまり馴染みのある概念ではないだろう。  信じているかと聞かれると、信じているとかいないとかそういう問題ではなく、在っても無くても今を生きている身としては興味がないと言うのが正解なようなものだ。  それを、今、自分の目で目撃した日葵の感想はと言うと、 「へえー地獄って言っても生きてた頃とそんなに変わらないんだねえ」  と、こんなものである。 「けっこー落ち着いてるね。ここに来るやつ大の大人でも大抵見苦しく泣き喚くけど」 「うん。まあ覚悟はしてたって言うか・・・」 「あーなるほど。先天性の病気系?」 「いや、それも違うけど・・・系統で別れてるの?」 「ふうん、まあなんにせよ、あんたほど泰然自若とした佇まいを見せたのはあいつ以来だよ」 「あいつ?」 「うん。なんて言ったかな。印象的で珍しく名前まで覚えてるぜ。確か・・・そう。刑部罫とか言ったかな。あ、もひとりいたっけ。あの子は記憶から抹消したいなぁ」
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