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「まーね、泣きじゃくるガキ共の相手もうんざりだからね。私は保母じゃねえんだよ!」
「そうだね、渚姉に子供預けられる勇気あるお母さんはなかなかいないよ」
「勇気? 保育園あずけるのに勇気いるの?」
「うん。地獄の保育士さんが運営する保育園に大切な我が子を預けるお母さんは多分存在しない」
「いやいやいるいる。絶対いるぜ。例えば育てきれなくなって我が子を殺すお母さんとか」
「なんでそんな悲しい話をするの? もっと楽しい話をしようよ」
「おっけおっけ。じゃあ楽しい話題ぷりーず」
「楽しい話題・・・あ、こないだ私ケイの右耳の裏にほくろ見つけた!」
「あの世で一番どうでもいい話題」
「あ、でもでもでもでもケイの耳めっちゃいいんだよ。物凄い遠くの鬼の足音が聞こえるの」
「なんで向日葵ンは警部殿の耳にご執心なの? 何で耳? 特殊な性癖? って言うかおかしくない? なんでそんな顔の細部のパーツについたほくろを発見したの? あ、もしかして君たちそう言う関係? そう言う趣味?」
「なんかよくわかんないけど渚姉の妄想が暴走しているのはわかる」
「地獄に咲く一輪の百合! 萌えぇぇぇ」
「戻って来て渚姉!」
「既に耳の裏まで濃密に交わってるんなら私の出る幕じゃなくね?」
「別に交わってないよ。ただケイの耳があまりにイイから何か特別な仕掛けか何かついてんじゃないかと思ってちょっと弄くってみたの」
「命知らずだね」
「死んでるからね」
「で? どうなったの?」
「あぁ、うん。生きてたら全治四カ月だって」
「あっはっはっは。愉快、愉快」
「愉快じゃない。不愉快だよ」
「ちがかろ!」
「ケイってば容赦ないんだもん。地獄だからって暴力は反対!」
「おーおー地獄で暴力反対? そんなもん向日葵畑で花の香り出すなっつってるようなもんだぜ」
「地獄って暴力そのものだったの?」
「そんなようなもんだろ。ほらほら等活地獄なんか寸刻みにきざまれきざまれて死んでは生き返ってを繰り替えすんだぜ? まあ警部ちゃんなんか無理が祟って賽の河原で一人等活地獄やってっけどさ」
「とうかつじごく?」
「三途の川のいっこ下にある地獄だよ。八大地獄って聞いたことない? 八寒地獄てのもあるけど」
「・・・?」
「無知だなぁ」
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