壱  彭城日葵 死亡

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「落ち着きなって。地獄って言っても一番軽~い地獄だよ。地獄の入り口も入り口、三途の川の手前なんだから。ただ石を積み上げるだけだよ。針山に突っ込まれたり釜で茹でられたり火の海だったりはしないから。問題ナッシング」 「問題だらけだよぉ。地獄なんかやだぁ」 「じゃあ何? 君は自分は天国に逝けるとでも思ってたわけ? 自意識過剰だねえ。現世じゃヒーローだったとでも?」 「そっそう言う訳じゃないけど・・・」  天国に逝けると確信できるほど自意識過剰でもなかったが地獄に堕ちると確信するほど自虐的でもなかった。 「言っとくけどね。現代の信仰心の欠片もないような馬鹿な若者共はほっとんどが地獄行きだぜ? 閻魔様に舌抜かれたうえで死んでは生き返りの苦行を半永久的に続けるヤツがほとんどだ。地獄なんて案外ちょっとした理由で簡単に堕ちるもんだよ。友達に嘘ついた=地獄。陰口を叩いた=地獄。軽犯罪犯した=地獄」 「きっ厳し・・・」 「厳しくて当然だよ死後の世界。なんせもう死んだんだから。死んだら誰もかれも天国に逝けるんじゃ必死こいて生きてる生者が報われねえだろ? 生きると言う努力を免除されるんだからある程度の苦しみは甘んじて受けるべきだ。・・・・・・・・・ってコレ閻魔兄さんのありがたぁいお言葉」 「姉さんの言葉じゃないんだ。・・・て言うか閻魔大王ってそんなフレンドリーに呼んでいい感じなの?」 「おうよ。マブダチだぜ? こないだライン交換した」 「地獄にラインあるの?」 「こないだスマホの制作関係者が死んでさあ。地獄も一気にデジタル化社会になったね」  制作関係者が死んだからと言ってスマホまでついて来るわけではないのでは? と言う日葵の疑問があまりにわかりやすく顔に出ていたからか姉さんは日葵が疑問を口に出す前に答えを出した。 「閻魔兄さんが造れって命令したんだよ。地獄行きを免除する条件でね。いやあ発明ってのはしておくべきだねぇ。地獄文化の発展に協力すれば天国に逝ける可能性もあるんだよ。まあそこらへんは閻魔兄さんの一存だね」 「ええー発明なんかしてないよぉ」 「だから地獄行き。オーケ?」
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