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肆 生と死の狭間の少年
「第一回、チキチキ地獄でビーチフラッグぅぅぅぅぅ!」
「ひゅーっぱふぱふ!」
地獄の玄関前、賽の河原。涙しか流れぬその場所で場違いにほどがない底なしの明るい声が二つ、響いた。
「・・・」
それに伴い地獄を生き抜く、もとい死に抜くたくましい少女、刑部罫の顔が美少女にあるまじき引き攣り方をした。
「・・・てめぇら・・・なに、してやがる・・・?」
引き攣った口元から擦れた低音を絞り出すと帰る答えはこうだった。
「地獄でビーチフラッグぅ~」
「ぴーぴーぱちぱちぃ」
地獄の案内人こと汐凪渚と、本編主人公であるはずの彭城日葵。
前回の一件以来初めて会うはずの二人、気まずくなって然るべきであるはずがその対極、むしろ妙な連帯感が芽生え始めているようだ。
「汐凪、日葵、テメェ等は・・・馬鹿なのか?」
ただの暴言ではなく割と切実なケイの言葉に日葵はブンブン首を振りまくって身の潔白を主張した。
「ちなうちなう! ちなうんだよケイ! 私は渚姉に言われて・・・」
「ほほう、渚姉に言われればヒューマンビートボックス的な仕事でもやるのか」
「い、いや、これは何かの間違いで・・・」
「ちょっと上手いとこが余計ムカつく」
ケイは日葵の頭をぐりぐりやりながら渚姉を睨んだ。
「おいコラ汐凪、何考えてやがる」
「私は何も考えていません。だって死んでるからーっ! あっはっはっは」
「笑い事じゃねエエエエエッ」
「笑い事だよ~。笑うの大事だよ」
「前回のシリアスな雰囲気は? ここまで築き上げてきた作品の世界観は? ハイブリットにもほどがあるだろうがッ!」
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