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適当に当たり障りのない雑談をしていると、浜田は会話の途中で声のボリュームを落とした。
「猫村くん、知ってる? うちのクラスに変な子がいるの」
「えっと……まさか俺のこと?」
真面目に言ったつもりだったが、浜田は声を上げて笑った。
「あはは、違うよ。なになに? 猫村くんって変人なの?」
「変わっている自覚はあるよ。少なくとも、普通ではないと思う」
俺のように好んで青春を送らない高校生は、おそらく少数派だろう。
「へぇ、意外。どこが変なの?」
「いや。俺の話はまた今度にしよう。それで、うちのクラスの変な子って?」
「あ、うん。噂なんだけどね。なんか言動と行動が破天荒らしくって。なんでも『青春きらきら姫』なんて言われているらしいの」
「せ、青春きらきら姫……」
変人というか、単純にイタイやつじゃないのか、そいつ。
「その青春きらきら姫ってどの子?」
尋ねたとき、ちょうど担任の山田先生が入ってきた。若い女の先生で、生徒からはわりと人気がある。
浜田は「先生来ちゃった。また後でね」とウインクした。明るくて社交性があり、しかも可愛らしい子だ。彼女は俺と違って友達が多いのだろう。
山田先生は軽く自己紹介を済ますと、俺たちにも自己紹介をするように促した。
自己紹介はつつがなく進行していく。無難に済ます者、笑いを取りにいく者、恥ずかしそうに話す者。俺はクラスメイトの自己紹介を、どこか他人事のようにぼんやりと眺めていた。
俺の番が回ってきた。簡単に自己紹介を済ますと、誰にも聞こえないような小さな声で「この人、変人でーす」と浜田が言った。後ろを向くと、浜田は舌をちろっと出して笑っている。まるで母親に悪戯が見つかった子どもだ。
続いて浜田の自己紹介が始まる。彼女は簡単に名前と趣味、今年度の抱負などを述べた。
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